持続的な企業価値向上に向けた
成長戦略と組織強化
中期事業戦略を実現するための鍵とは ~ 事業ポートフォリオの再構築
—— 2023年のケイアイスター不動産取締役会で議論された話題や取締役として言及されたことを教えてください。
塙代表取締役社長(以下、塙)
当社は、“高品質、だけど低価格なデザイン住宅”の供給により、お客様の資産価値向上に繋がる住まいづくりを目指しています。当社の「コアコンピタンス」は、土地仕入から設計・施工・販売、アフターサービスまで一気通貫を可能とするプラットフォームです。以前より戸建分譲事業に経営資源を集中投下してきましたが、さらにスピードを上げて事業を展開していきます。国内戸建分譲事業領域の当社シェアはまだ低く、5%弱にとどまっています。今後は規模が小さく、競争力の低い分譲企業は市場からの撤退が加速すると想定されますので、先ずは当社シェアを10%、15%へと引き上げていく方針です。このシェア拡大の中で同時並行的に事業ポートフォリオの再構築を図りたいと考えています。
酒井社外取締役(以下、酒井)
取締役会にて議題となった中期経営計画の事業ポートフォリオについてですが、国内戸建分譲事業を軸にしつつも、それ以外の事業をどのように作り上げてどのように価値を上げていくのかについて繰り返し議論してきました。個別の案件としては、海外事業や注文住宅事業などの強化でした。
塙
注文住宅事業については、規格型平屋注文住宅IKI(イキ)、ローコスト企画型住宅のはなまるハウスを事業の軸とし、M&A戦略を展開することで事業拡大を図り、収益物件事業やマンション事業領域などへの展開も図りたいと考えています。
そして、当社の重要課題は海外での事業展開です。現在、海外事業については豪州ビクトリア州にて順調に戸建分譲用地の仕入れを拡大しており、3つのプロジェクトを展開しています。今年6月に現地パートナーとの共同出資によるJV(ジョイントベンチャー)企業を設立し、事業展開を本格的に開始しました。
今後は、豪州に加えて、米国市場への事業展開により、国内分譲住宅事業の売上に匹敵する規模の海外売上を目指したいと考えています。
酒井 今後、日本国内の人口が減少する中で、国内住宅事業の成長余地はまだあるものの、戸建分譲事業の一本足打法から、経営資源を再配分することにより、バランスの取れた事業ポートフォリオを構築する必要があります。国内で盤石な基盤を築くとともに、住宅市場の成長が見込める海外への進出、特に北米への進出が重要ではないでしょうか。海外市場については、長期的にはASEAN諸国への進出も必要でしょうが、先ずは、現在の豪州の事業拡大と今後の北米展開に集中すべきではないかと考えています。
塙 経営資源の再配分は極めて重要なテーマです。コロナ特需が終わり、従来の事業環境に戻った中で、今後、国内事業のポートフォリオをどのように構築していくのか、豪州および米国への事業展開を進め、売上構成比率をどの程度まで引き上げるのか、取締役会でもしっかりと議論し、経営課題を解決していきます。
多様性のある人材を積極的に取り込み、人材を育てていく
—— 今後は、国内事業に止まらず、海外でも存在感を高めていくためにはどのようにすればよいでしょうか。
塙 国内戸建分譲事業のビジネスモデルは確立していますが、注文や収益物件、マンションなどの事業展開を積極的に推進するためには、人材育成・採用強化が不可欠であると考えています。海外展開については、当社の経営理念や価値観、「すべての人に持ち家を」というビジョンを共有できる、現地で信頼関係を築いたパートナーと手を組み、同じ方針・方向に向かって事業展開を図っています。とはいえ、地域によってテイストやマーケットの違いがあるため、日本のビジネスモデルを横展開するのでなく、地域に合せたローカライズが必要です。そのための最大の課題はやはり「人材」です。海外展開は中堅幹部クラスの人材育成が鍵を握ります。海外展開を推進する上での必要なスキルの把握や現地従業員の育成など、人材教育システムを確立することにより、十分な成果が得られるものと考えています。
酒井 日本企業にグローバル人材が求められているにもかかわらず、その人材が不足しており、海外事業を開拓できる人材の育成がますます重要になっています。しかし、海外経験のある人材や外国籍の人材は少なく、女性の海外駐在員なども数が限られており、同質化している状態になっています。
塙 当社は不動産業界の中では外国籍の従業員を積極的に採用しており、自分たちと異なる価値観や考え方の中で育った人材を受け入れています。また、豪州での海外事業における社内公募を行った結果、4名の派遣が決定し、そのうち3名が女性従業員でした。当社はこれまで以上に多様性を取り込み、海外事業をマネジメントできる人材を育てていく方針です。
10年、20年後を見据えて持続的な企業成長の実現に向けた組織力の強化
—— 次の10年の飛躍を実現するための組織力や経営監督機能の強化の取り組みについて教えて下さい。
塙
1990年に創業し、バブル崩壊やリーマンショックを経て、2015年12月に東証に上場し、パブリック企業の仲間入りを果たしました。上場後の急成長により、いろいろな苦しみもありましたが、事業への確かな手ごたえを感じながら、企業としての足場を固めていきました。
現在の国内戸建分譲事業は、コロナ特需が終わり、郊外の一部の地域は在庫過多による在庫調整が生じています。先程もお話しましたが、今後は市場の淘汰が進むと予想します。10年後のKEIAIのために、目の前のことに必死で取り組み、悪いところは改善し、良いところを伸ばしながら、「持続的な成長」を実現する企業を目指していきます。
酒井 東証に上場してから7年で売上2,400億円を超える企業に成長しましたが、塙社長を筆頭に「個」の力により、事業を成長させてきたと考えています。しかし、今後の10年の企業成長に於いては、従業員一人ひとりの「個」の力だけに頼るのでなく、「組織」の力に変えて取り組んでいく必要があります。
塙
先生のご指摘のとおり、東証への上場以来、事業が急拡大し、M&Aしたグループ会社も加わり、さらなる企業成長の実現に向けた組織力の強化が必要不可欠と考えています。
他社で活躍していた経営人材を採用し、人材の補強を着々と進めていく中で、経営のガバナンス体制を全面的に刷新するなど、「組織」の力に転換する仕組みを構築しつつあります。
酒井 経営のガバナンス強化と当社の高速回転経営(迅速な意思決定)には相反するところがありますが、健全なせめぎ合いがあってこそ、けん制機能を備えた経営体制と言えます。ただし、ガバナンス体制の強化は、経営の意思決定のスピードの低下、業務効率の低下を招く恐れがありますので、攻めと守りのバランスを上手く取ることが重要だと考えています。
塙
高速回転経営(迅速な意思決定)は当社経営の根幹ですが、一定のガバナンスを効かせてこそ正しく機能するものであり、それを支えるための仕組み作りを行ってきました。不動産業界の中でもDXを逸早く導入し、テクノロジープラットフォームと独自のコンパクト分譲開発モデルを構築し、経営のスピードを上げてきました。今後も攻めと守りのバランスを取りながら、事業および組織全体が成長していくように推進していきます。
今年は、次なる10年を踏み出す元年として、私自身が「経営」としての役割を最大限に果たし、より一層「強いKEIAI」にすると決意しています。常に10年、20年という時間軸を持ちながら、当社の強み弱みを徹底的に分析し、持続的な事業成長のための布石を打っていきます。
代表取締役社長
塙 圭二(はなわ けいじ)
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1990年11月
有限会社ケイアイプランニング(現当社)
設立にあたり創業メンバーとして参画 -
1991年7月
有限会社ケイアイプランニング(現当社)
代表取締役社長(現任)
社外取締役
酒井 弘行(さかい ひろゆき)
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1980年10月
アーサーアンダーセン入所
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2015年7月
あずさ監査法人理事長、及びKPMG Japan,CEO 就任
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2019年6月
あずさ監査法人理事長、及びKPMG Japan,CEO 退任
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2019年7月
一般社団法人日中経済協会 監事(現在)
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2020年1月
酒井 & パートナーズ 代表(現任)
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2021年7月
農林中央金庫監事(現任)
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2023年6月
当社社外取締役(現任)
公開日:2023年12月21日
※肩書・所属について掲載時における情報を記事に反映しています